【SS】ゆめのうつしえ。ー色彩の衣(ころも)ー

 成人式の翌日。お尻までの長い黒髪を、ばっさりショートカットに。うなじが寒いが、洗髪が楽になった。

「なんで切っちゃったのぉ? さらさら黒髪で遊びたかったよぅ!」

 後日。お茶デートした美容師の専門学生である同級生が嘆いたが。知るか。

 練習させて! 逢うたびに三つ編み。ボーンフィッシュという編み込み。ポニーテール。ツインテールして、お団子。など、髪を弄っていた。動いても崩れない髪型には感謝。

 家は、父方の祖父が起業した大衆食堂。ラーメン、チャーハン、餃子が主力。厨房にアルバイト2名。ホールにアルバイト2名、パートさん2名。

 父は現役の2代目。ありがたくも、2歳上の兄が3代目となるために専門学校を出てから、祖父の知人店主の和食店で修行中。父から暖簾を受け継ぎ、和食を取り入れるのだという。

 私、早川弘子(はやかわ ひろこ)、20歳は、公立大学の福祉学科。家を手伝うアルバイト代が、お小遣い。子供の頃からである。

 常連さんにショートカットを驚かれたが、さっぱりしたので、まぁ好評。

 福祉現場でも動きやすいので、髪を切ったことに後悔は無い。「失恋か?」と、からかわれたがスルー。

   *   *   *   

 やりたいことが、できた。

 高校2年生の秋。同級生の手作りアクセサリーが羨ましくなって、作り方を教えてもらった。その人は、美術の専門学校に通学中。

 大学受験の間も、気分転換に作業を始めたら、うっかり徹夜したことも。

 今は、店のレジ横に、小さなアクリルケースに飾っている。安価で販売しているが、立派な起業だと父が誉めてくれた。

 必要最低限な会話をする人が珍しい。と、母は驚いていた。

 自治会が定期的に開催するイベント案内のチラシを、手が滑って床にばらまいてしまった。あーあ、と即座に集めるが。

 白い紙が混ざっていた……ような気がした。都市伝説の『ゆめのうつしえ』という白い紙を。

 眠って見た夢を画像に残す『移し絵』。

 自分で現実に叶える未来の姿を現す『写し絵』。希望を描(えが)く『映し絵』。

 どうなるかは、その人次第。

 人間限定で、手に触れた者の『夢』を画像に現すと、紙は満足して自ら次の者へと移動し、人間世界を渡り歩くのだと。

〈続〉